●鼓膜換気チューブ留置術

小児の疾患は多数ありますが,その多くは一時的な疾患で将来に永続的な影響が残ることはありません。しかし中耳炎という病気は数パーセントほどではありますが永続的な影響が残るという点で重要です。

当院では難治性中耳炎の患者さん(特に乳幼児)に対する鼓膜チューブ留置術を行っています。

乳幼児において反復する中耳炎はその原因となる易感染性(きわめて大雑把にいうと風邪のひきやすさ)が解決しない限り治りません。近年,肺炎球菌ワクチン,インフルエンザ菌ワクチン(Hibワクチン)のお陰で中耳炎の重症化や遷延例も減少していますが,それでもコントロールに苦慮する中耳炎があり,この治療が必要になる場合があります。

難治性中耳炎に対してはチューブ留置術を行うのが一般的な方法です。

チューブはゴムのように柔らかいシリコン製で,サイズはマッチ棒の頭ほどです。入れてしまえば痛みも違和感もなく,聴力も殆ど正常です(中耳炎の状態よりはるかによく聞こえます)。

鼓膜を麻酔し,チューブの留置にかかる時間は片耳30秒〜60秒程度です。大きな病院で全身麻酔下でなければ留置できないといわれた子供でも,その殆どで診察椅子の上で留置可能です。開院以来すでに1000名以上の乳幼児に施行してます。

 

留置後は基本的に耳の処置は必要なく,1ヶ月に1回ほどチューブの状態をチェックするだけです。中耳炎治療のための薬剤も基本的に必要ありません。

自然に脱落することもあり,知らないうちに中耳炎が再発している場合もあるので定期的なチェックが必要です。

風邪をひく頻度が1ヶ月に1回,理想的には2ヶ月に1回よりも少ない状態になればチューブなしでも大丈夫だと判断し抜去の説明をしますが,抜去時は痛みを伴うので自然脱落を待つ場合もあります。

チューブを入れた鼓膜に穴が残る例が10〜20%ほどあって,後に穴を塞ぐ治療が必要になる場合があります。当院で治療を行って開いた穴については,当院で責任をもって治療させていただきます。