美貌と健康は相容れない

太陽を見ることが稀な雪国の朝は夜のように暗いことがある。それでもテレビの中では気象予報士のお姉さんが透き通るようなピーカン空をバックに「今日は冷えてます」などと宣っておられる。明るい青空が見える多少の冷えなどなんの苦にもならんではないか。TV画面に広がる関東の青空に溜息をつくのが雪国人の冬の日課である。

なんでも冬でも晴天下には結構な紫外線が射すらしい。きっと関東地方の女性は冬でも紫外線対策に余念がないのだろう。

故夏目雅子さんの小麦肌時代が既に遠い過去のことに感じられるが,その後の美白時代は今も隆盛を誇っている。時代を移行させたきっかけは紫外線による皮膚がん発症の問題だったと記憶しているが,目標を十分達成してもなお美白文明は暴走を続けているように見える。

女性がある美意識に目覚めると健康を犠牲にするという法則は時代や土地を問わないようだ。近世まで続いた中国の纏足(てんそく)はその典型だ。足を小さく縛り付けて小さな沓(くつ)に収める様は今の目で見るとただただ痛々しいが,時代はそれを「美」としていたのである。

残念ながら肌の白さはそれが不健康でありながら痛々しさが伝わらない。女性の氷のように白い肌を尊ぶ氷肌玉骨(ひょうきぎょっこつ)という言葉は古代中国のものである。おそらく今後も肌の白さを美とする時代は続くのだろう。

なぜに健康と美貌はこれほどまでに相容れないのだろうか。(写真は2011年冬の男鹿半島)