ウイルスにとっては人間の冷静さが最も脅威
新型コロナウイルスの伝染拡散が喫緊の話題になっている。
人間を不適切な行動に誘うものは,ほぼ常に「欲」と「不安」。様々な情報が錯綜する中で不安が高まっているからこそ,その情報の靄(もや)から抜け出してドローン視野から社会を眺め,自分はどう行動すべきか考えなければならないと思います。
新型コロナウイルスの死亡率という点から見た脅威の度合いはまだ分かっていません。現時点での中国での発表では4000分の100程度,単純計算で2%の致死率ということになる。
ここで考えるべきは中国で行われたウイルス検査の対象者である。コロナウイルスにはフルエンザ検査のような迅速検査はなくまた検査コストも高いため,検査を行われる人は厳選されていたと考えられる。つまりすでに肺炎になった人あるいは重症な呼吸器症状を呈した人にだけ行われた可能性が濃厚だ。軽症者や無症状者(不顕性感染者)の存在はすでに信頼性のある情報だ。そうすると感染者の実質的な死亡率は発表された死亡率よりもずっと低いと思われる。
ただ,中国という国の性質上,実際の死亡者数は主催者発表のデモ参加者数とは逆に過少申告している可能性は否定できない。気を抜くことはできないことは確かである。
次に,我々は実際にどう行動したらよいのかという話になる。錯綜した情報の中で視界を確保するために意識したいポイントは以下です。
①軽症者や不顕性感染者が存在する中にあっては,誰がウイルスを持っているかは見かけからは分からない。
②インフルエンザのような迅速検査ができない。なのでカゼ症状を示した人全員にコロナウイルス検査をすることは現実的に無理。
③医療資源の有限性上,検査は必要な人に対してだけ行われる必要がある。「心配なので検査してください」という希望に応じて検査することはできない。
④仮に軽症者に対する検査が可能であっても,コロナウイルス感染症に特効薬はなく,結局は他のカゼ同様に対症療法と経過観察しかない。治療の必要性は肺炎の有無で決まる。
⑤ウイルス肺炎である以上,早期にウイルス感染を確認できても肺炎化を予防できない。また原因がウイルスのため医療機関で抗生物質をもらっても予防できない。
⑥高齢者等の免疫力低下者を除けば,その脅威の度合いはインフルエンザと同等かそれ以下と思われる。
⑦不安に揺り動かされて医療機関に向かえば,それこそコロナウイルスの思うつぼである。
もしパンデミック(大流行)の可能性が高くなった場合,死亡者を減らすために最も有効な方法は老人施設や高齢者の多い病院を外来者から遮断することである。なんてことはない,これはインフルエンザ時の対策と同じである。
何が怖いか,それは不安に揺り動かされた人々の行動だ。今後様々な不安を煽るようなSNSやマスコミ報道があると思われるが,何よりも強いウイルスに対する抵抗力とは「冷静さ」であることを肝に銘じたい。
リンクはジョンズ・ホプキンス大学の発表した新型コロナウイルス患者の発生状況をリアルタイムに示すマップ。